『人事評価の「曖昧」と「納得」 (NHK出版新書)』
目標管理を行う際には、目標設定時に従業員本人の主体性を尊重することが重要とされます。
評価される内容について、評価される本人が策定に関わることで、本人にとっての目標の妥当性が高まり、達成への意欲が高>まることが期待されるというわけです。
なおかつ、そのように目標を定める過程で、従業員が何をすべきかを、評価者が部門や全社の戦略を基に判断することになります。
その結果として、論理的には、企業と従業員の間での方向性の共有がなされます。
(P.61)
「納得」という言葉を定義するのは、意外と難しいのですが、本書ではさしあたり、「今後の仕事に対する前向きな気持ちの減退をともなわない、評価や処遇への従業員への反応」としておきましょう。
「強化する」ではなく「減退をともなわない」という奥歯に物が詰まったような二重否定ですが、企業側にはそこを目標とせざるを得ない事情があります。
(P.62)
評価にかかわる関係者は、相手の状況に対する当事者意識をもちながら、必要なコミュニケーションを行う。
そして、企業にとっても従業員にとっても意味のある職務遂行上の目標を設定し、目標の達成度を導き出す。
なぜその達成度になり、それを踏まえてこれからどうすればいいかについての共通理解を取り、「これまで」と「これから」を結びつける。
こうした手間をかけてこそ、従業員は「ここで働くことは経済的にも心理的にも自分にとってベストな選択である」と思えるし、彼らの力を経営目標の達成に向けて動員することができます。
逆に言うと、それさえできていれば、日常の事細かな管理統制や報連相(報告・連絡・相談)の多くは減らせるのかもしれません。
そして、一部の従業員の中には、打算の産物である「ベストな選択である」というものを超え、「ここで働けなければならない」という信念すら芽生えるのかもしれません。
(P.66)
それは、段取りが整っている事実を手掛かりにして、被評価者が自分に示された評価を適切なものだと思うようになる、というものです。
この因果の経路においては、評価結果の適切性についての評価者と被評価者の間での合意は、必須ではありません。
自分が伝える評価結果の適切さについて評価者が確信していなくても、被評価者はそれに納得するかもしれないからです。
つまり、「過程の公正」は象徴的に機能するものであり、なにより被評価者にとって重要なものとなりえます。
よほど都合の悪い評価を被評価者が受け取らない限り、こういうことが起こりえます(Van den Bos and Lind, 2002)。
つまり、「結果の公正」が、評価者による印象操作や虚偽の中でも成立してしまう可能性は否定できないのです。
(P.69)
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